6回に1回は病院に行かずにeVisitで診察を受けられる!アメリカ&カナダの近未来

ベビーブーム世代の高齢化と、ここ10年のネット環境の劇的な改善により生まれた「telemedicine・遠隔医療」。従来のようにクリニックや病院に行くより、便利で節約にもなるためか、急速に拡大している。

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2014年の米国およびカナダのGP(開業医)での診察は、Deloitte調査によると、6億件中7500万件が、eVisitになると見込まれる。

世界的に見る通常の診察の受診費用は、総額1750億ドル。eVisitの実施数は、2014年に1億件に上ると考えられ、その場合、従来の診察方法に比べ、50億ドルの医療費削減となる。2012年と比較して400%の増加が見込まれている。 

ピッツバーグ大学医療センター(UPMC)は、2013年8月、患者向けのポータルサイトを徹底的に改善した。MyUPMCに名前を変更し、AnywhereCareという年中無休・24時間営業のeVisitサービスを開始した。ペンシルバニア州の患者は、このサービスを利用して、電話やビデオ会議で医師への相談が可能になった。 

UPMCは、病院21施設、外来専門施設400以上を持つ、110億ドル規模の医療提供機関+保険者。AnywhereCareサービスの責任者であるNatasa Sokolovich氏によると、当サービスは80%の満足度を得ており、患者は、便利でスピーディであるところが気に入っているという。「このモデルでは、返事をすぐにもらえる。30分以内で、医療提供者へのアクセスが可能なのだ。」 

eVisitまたは遠隔医療は、医師と患者の間で、電子文書(各種コンテンツ)の交換、電話相談、電子メールやテキストメッセージのやりとり、ビデオ会議ができる仕組み。

Deloitteによれば、eVisitの大半は、医師と直接的なやり取りをするSkypeやその他のリアルタイムツールを活用するものというよりは、電子フォーム、アンケートや写真を通して、患者情報を取り込む用途に使用される可能性も高い。 

たとえば、まず、副鼻腔炎、連鎖球菌性咽頭炎、アレルギー、膀胱感染症やニキビなどの特定の症状のある患者がオンラインフォームに記入する。その後、診断結果を受信し、必要な場合には処方箋ももらえるという流れ。 

すべての医師への対面診察がeVisitに置き換えられるわけではないが、アクセス可能な市場の30-40%がeVisitになるだけでも500億-600億ドルに相当する。 

AnywhereCareのeVisitサービスを利用するには、UPMCの患者はインターネットに接続し、症状のアンケートを記入し、回答可能な医療従事者から連絡が来るのを待つ。患者は、過去の予約や検査結果、医師と同じ医療情報を、電子カルテ(EMR)システムを通じて見ることができる。

UPMCの元ポータルサイトは、施設に勤務中の医師とのみコンタクトが可能であったため、回答がもらえるまでに24時間待つこともあった。現在のシステムに変わってから、ペンシルベニア在住の人は誰でも、このサイトを通じて医療従事者にコンタクトを取ることが可能。AnywhereCare が11月にサービスを開始してからの訪問数は2100件になる。 

UPMCは、eVisitの導入により、メンバーの訪問1回あたり平均86.80ドルの削減を実現。 

Sokolovich氏は、業界全体のさらなる医師不足が予想されるため、最終的にはeVisitsがプライマリケア診療にかかる圧力を緩和してくれることを期待しているという。 

 

2012年のThe Physicians Foundationを対象とした調査によると、回答者13575人の平均年齢は54歳だった。米国医師会(AMA)に所属する医師の平均年齢は49歳であるのとは異なる。また、American Association of Medical Collegesでは、実際に臨床を行っている米国の医師10名中4名は55歳以上としている。 

Healthcare Information and Management Systems Society (HIMSS)のシニアディレクターであるDavid Collins氏は「つまり、医師が高齢化しており、看護ケア、プライマリケアの医師が不足している一方で、人口は全体的に高齢化している。ベビーブーム世代1万人が毎日65歳を迎えているのだ。計算してみればすぐわかる。」という。 

医療費の問題

医療の遠隔化の採用が大幅に増えるもう一つの理由は、医療費負担適正化法(Affordable Care Act)である。この憲法では、医療を標準化することで品質を向上させながら、医療費を削減することを強調している。

「ITがゲームチェンジャーになる」とCollins氏は言う。次年度の支払ルールの詳細を記述した609ページの膨大な資料「The U.S. Centers for Medicare and Medicaid Services Fee Schedule」では、初めて10ページも裂いて、遠隔医療やeVisitを有料化する方法を記述している。 

Deloitte によると、EVisitの活用は、アクセス可能な市場の25%にまもなく達する見込みの北米でもっとも多くなると考えられる。 

米国では、2010年に診療所、救急科、病院の外来診療に来た患者数が12億人。人口1人あたり3.3回に該当する頻度。このうちプライマリケア医の診察は、50%強で、再処方、咳、胃痛、喉の痛み、耳の痛み、皮膚発疹が1.1億件であった。これらはすべてeVisitを介してスクリーニングしたり、解決したりできる内容であるという。 

Collins氏は「オンラインの診察が好きになれない高齢者は必ずいると考えられるが、若いコンピューターの得意な世代は、これを採用し、当たり前のものとして使うようになるだろう。」という。 

UPMCのSokolovich氏も「このシステムが認知されれば、自然と求められるようになり、風邪や咳、伝染性結膜炎などのプライマリケアに行くような状況のときには、遠隔医療にアクセスするのが普通になります。」と同意する。

 

By Lucas Mearian 
Computerworld | Aug 8, 2014 3:36 PM PT

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