がん専門医が語る、米国で抗がん剤が高価な理由と7つの対策案

f:id:pharma-article:20150325120138j:plain

Mayo Clinic Proceedings(オンラインで公開される会報)によると、抗がん剤はますます高価になり、米国の患者治療および医療制度全体に影響を与えている」

著者の一人、Mayo Clinic Cancer CenterのS. Vincent Rajkumar, M.D.は、「アメリカ人がん患者は、他の国より50-100%増しの料金を、同じ先発品の治療薬に支払っている。がん専門医として、私たちは患者が手頃な価格で抗がん剤を入手できるようにする道徳的義務がある」という。

Rajkumar医師や共著者のMD Anderson Cancer Center のHagop Kantarjian医師は、抗がん剤治療にかかる年間費用は、2000年までは$5,000~10,000だったのに対し、2012年には$100,000以上になっている。一方、ほぼ同時期の米国の平均世帯収入は約8%の減少であった。

 

抗がん剤が高価である理由として、製薬業界は、研究開発費用、患者に対する相対的なメリット、価格は市場により合理的な価格に設定されていること、価格統制は技術革新を阻害すること、などを挙げるが、論文ではこの主張に反論する。

 

「人々は気付いていないが、抗がん剤のほとんどは、自由市場経済の下で取引されているわけではない。不治のがんを患う患者に対する治療に使える承認済の抗がん剤が5つあるといっても、競争状態にあるとはいえない。標準治療を考えればわかるが、各薬剤は、順番に、または併用して使われるように決められていて、つまり、各新薬は、長期の特許期間中、排他的な独占状態にあるのだ。」

 

抗がん剤が高価な理由として、Dr. RajkumarとDr. Kantarjianは、メディケアは法的に薬価交渉ができないため、価格とほかの薬と比較した相対的な効果によって価格を決める、価値ベース価格が設定できていないことを挙げる。

また、米国の高価な抗がん剤費用を制御し、減らすため、以下の案を提示している。既に他の先進国では取り入れられているものもある。

 【7つの対策案】

  1. メディケアが薬価を交渉できるようにする
  2. 費用と抗がん剤のメリットを考慮に入れたがん治療ガイドラインを策定する
  3. FDAまたは医師パネルが、薬剤がどの程度の利益をもたらすかに基づいて設定した目標価格(価値ベース価格)を提言できるようにする
  4. 先発品メーカーがジェネリックメーカーと特許残存期間の利益を共有することで、特許への挑戦や競争を効果的に押さえる、”pay-for-delay”戦略をなくす
  5. 個人利用のための薬剤を外国から個人輸入できるようにする
  6. PCORI(Patient-Centered Outcomes Research Institute;患者中心のアウトカム研究所)やがん患者擁護団体が推奨する価格を提言できるようにする
  7. 患者主導の草の根運動や組織を作り、製薬会社、保険会社、薬局店舗、病院とバランスの取れた、がん患者の利益になるような提言が効果的にできるようにする

 

MONDAY, 16 MARCH 2015

Reproduction is authorised, provided its source "World Pharma News" or "www.worldpharmanews.com" (with web link to http://www.worldpharmanews.com) is acknowledged!